電子工作１２２ – 携帯扇風機（ハンディファン）のモーターを交換する
Electronics Project 122 – Replacing Broken
Motor of Portable Electric Fan
概要 Introduction
気に入って３年ほど使って来た携帯扇風機が動かなくなった。千円ちょっとで買ったものだが、概観や電池に問題ないので捨てるのはモッタイナイ、忍びない。直して使い続けようと考え、いろいろ検討したら、モーターのブラシが磨り減って機能していないことが分かった。モーターにはラベルがなく、ネットで似たような物を探すしかない。モーター本体の外観、直径、高さ、シャフト長さなどから、それらしいものを探して購入。組込んで動かしてみた。最初の２−３分は予想通り動くのだが、やがて停止してしまう。何度やっても同じ。理由が分からない。この段階でこの購入したモーターも不良品と断定した。そこで、手元にあった古いマブチのDCモーターを組込んでみることにした。問題は、直径は元のものと同じだが、胴長やシャフトの長さが違う。そこで扇風機のモーターが納まる部分（プラスチック製）を半田ゴテで溶融して切り取って、マブチモーターが収容できるようにした。動く。
Even
if your handy portable fan has stopped working, don’t throw it away. You may be
able to fix it. First, check its motor. Open the circuit board case, remove the
two power cables of the motor from the board by desoldering them, and then
supply a power of DC3-5V to the cables of the motor to test whether it turns or
not. If not, the motor is considered to have reached the end of its life. Next,
you have to find a motor that has the similar size and specification as the
failed motor. In my case, at least, both a Mabuchi RE-280 and RF300CV-11320 motors were found to work.,
both of which we can find in some web shops. Another thing I had to know before
choosing a motor, the three output voltage values from the circuit board are
4.6V, 5.5V and 6.6V (corresponding to Step 1, Step 2 and Step 3 positions of
the pressing power-switch button). The rotation speed of fan impeller that
generates comfortable wind flow is 2000 – 3000 rpm. So, when I use a RE-280
motor, I inserted a 10-ohm resistor into the power cable in series to reduce
its rotation speed.
１）
故障した携帯扇風機 Failed handy
portable fan
左の写真が全体像、ハンドル部分上部にハート形の４段スイッチがあり、押すごとに１，２，３段と回転速度が増し、４段目ではハンドル下のLED ライトが点灯する。
右の写真は２本のネジを外して分解した状態、真中にあるのが回らなくなったモーター、左下に４枚羽根の羽根車があり、直径２ｍｍのモーター軸に差込んでセットする。.
左がモーターを駆動する基板の全体像、４段スイッチを動作させる機能や、１８６５０リチウムイオン電池（３．７V）を昇圧して１段目４．５７V、２段目５．４８V、３段目６．６０Vにして給電する機能が組込まれている。電池の充電はUSBのマイクロB端子を通じて行う。充電中の場合、スイッチは２段に動作し、１段目は４．５Vの電圧で羽根車が回転し、２段目は羽根車が止まり、ハンドル下のLEDが点灯する。中々優れた電子回路だ。１８ピンのICはPICか何かのマイクロプロセッサのようだ。右の写真は基板上部の拡大写真で、半田付けされた赤（+）と黒（−）の線は羽根車駆動のモーターに接続されている。真中の丸い黄色いの出っ張りは４段スイッチ。
１８６５０リチウムイオン電池（３．７V）で、容量は２０００ｍAh.。長さが６５ｍｍで、保護回路は組込んでなく、PSEマークもない。
18650
Lithium-ion battery (3.7V) with a capacity of 2000mAh
３）
故障したモーター Inside of the failed
motor. Its brushes are worn out after three-year use.
羽根車が動いたり、動かなくなったりの症状が出て、やがて、全く動かなくなった。原因究明にあたり、まず、モーターへの結線を外して別電源で動作を確認してみた。動かないのでモーターの故障と断定した。分解してみた。蓋になる部分がなかなか開かないので、縁をヤスリで削ってこじ開けた。コイルの巻かれた回転子は問題なさそう。右の拡大写真で見るように、２本のブラシの先端が磨り減って極端に薄くなっていることが分かった。これではコイルに電流が流れない。モーター本体には印字がなく、どんなモデルで、どこで購入出来るか分からない。
４）
入れ替えて使えるモーター
４−１） RE-280モーター Replaceable motor 1
１０年以上前に購入し、手元にあったマブチのDCモーター（多分RE-２８０）の直径は２４ｍｍで、故障した元のモーターのそれと同じ、ただし、胴長が長いので元のモーターのスペースに組込めない。そこで、プラスチック後壁を半田ゴテで熔かしながらモーターがきつめにすっぽり入るように加工した。回転時、羽根車が扇風機の外蓋に当たらないようにモーターの位置を手で調整。回転速度が高過ぎるので、下げるため１０オームの抵抗を電源ケーブルに直列に組込んだ。
RE-２８０？モーターの全体図： ネットで探したが、中々この古いモーターと同じようなものが見つからない。探し続けた結果、やっと、寸法や概観がほぼ同じものを見つけた。RE-280-200SAという呼称が付いていた。サイズ：胴長３０．６ｍｍ、胴径２４ｍｍ、フラット部厚さ１８．３ｍｍ、軸長１０ｍｍ、軸径２ｍｍ、電圧範囲：３V-9V。
このモーターを可変直流安定化電源に繋いで、電圧を３V, ５V、６.５Vと変えて羽根車の回転数と電流消費の関係を調べてみた。以下のように羽根車を１５００−４０００回転させる場合、３−９Vの範囲で１００−３５０ｍA位の電流が流れることが分かった。注：測定値の１桁目は数値が振れるので、四捨五入した。
（１０オーム抵抗なしの場合）
Without
10-ohm resistor
|
設定電圧 Added
voltage (V) |
回転数 Rotation
(rpm) |
電流 Current
(mA) |
|
3 |
1840 |
120 |
|
5 |
3040 |
230 |
|
6.5 |
3890 |
340 |
（１０オーム抵抗ありの場合）
With
10-ohm resistor
|
設定電圧 Added
voltage (V) |
回転数 Rotation
(rpm) |
電流 Current (mA) |
|
3 |
1430 |
100 |
|
5 |
2350 |
160 |
|
6.5 |
2900 |
220 |
|
9 |
3620 |
300 |
４−２）RF300CVモーター Replaceable motor 2, the shaft of which must be cut by
half to 5mm when applied to my handy portable fan.
このRF300CV-11320-23.5M-Rというモーターを秋月電子で￥１５０で購入した。そのサイズと仕様が故障した元のモーターに似ていた。すなわち、定格電圧DC3.5V, 動作電圧範囲DC2V-5.5V、始動電圧DC1.2V以下、無負荷時回転数5530+/-650rpm、静止電流0.55A以下、静止トルク17g-cm以上、本体サイズ直径24.4ｘ厚さ12.4mm。上記のモーターの場合のように羽根車を装着し、このモーターを可変直流安定化電源に繋いで、電圧を３V,
５V、６.５V、9Vと変えて羽根車の回転数と電流消費量の関係を調べてみた。以下のように、１０オームの抵抗を直列に入れて羽根車を回転させると、3Vから6.5V位の電圧範囲で快適な風量の回転数（１４８０−２５１０ｒｐｍ）が得られることが分かった。
（１０オーム抵抗なしの場合）
Without
10-ohm resistor
|
設定電圧 Added
voltage (V) |
回転数 Rotation
(rpm) |
電流 Current
(mA) |
|
3 |
2090 |
190 |
|
5 |
2840 |
340 |
|
6.5 |
3360 |
480 |
（１０オーム抵抗ありの場合）
With
10-ohm resistor
|
設定電圧 Added
voltage (V) |
回転数 Rotation
(rpm) |
電流 Current
(mA) |
|
3 |
1480 |
120 |
|
5 |
2120 |
200 |
|
6.5 |
2510 |
270 |
|
9 |
3010 |
370 |
このモーターは下の写真のように、サイズが軸の長さを除いて故障したモーターと全く同じなので、指で押すとすっぽりはまる。軸の長さは１０ｍｍなので、５ｍｍの長さに回転砥石などで切断する必要がある。
５） レーザー式回転計
Non-contact laser tachometer DT-2234C+ used to measure the rotation
speed of fan impeller.
今回、携帯扇風機の羽根車やモーターの回転数を測るため「非接触レーザー式回転計（タコメーター） DT-2234C+」を￥１５００で購入した。仕様のよると、２．５ｒｐｍから９９，９９９ｒｐｍまで１ｒｐｍ位の精度で測れるという。TESTボタンを押すと、レーザー光が本体左手のレンズから発射され、回転体に貼られた白地の反射体（付属品）に当たり、反射され光が内蔵の受光素子で受信され、カウントされる仕組みらしい。２０１４年頃にすでに出回っているので、そこそこの性能を持っているものと思われる。MEMボタンを押すと記録された最高、最低、最終値のようなデータが液晶上に表示される。
左の写真は羽根車の回転数を測る場合で、四角い白いものが反射シートである。これにレーザー光を当てて測定する。一方、右の写真の場合、白いプラスチック円盤に反射シートが貼ってある。モーターの回転数を出来るだけ正しく測る目的である。勿論、モーター軸だけでの回転より空気抵抗のため回転数は落ちる。
レーザー式回転計とホールセンサー法との比較 Checking the accuracy of the laser
tachometer by comparing it to the Hall-sensor method.
ホールセンサー法は電子工作６２（PICとホールセンサを使って小型DCモータの回転を検知する試み）で少なくとも１０，０００回転位までは正確に測定出来ることが分かっている。計測にはテスターやオシロの周波数測定を利用する。下に示すように、モーターにプラスッチク円盤を取り付け、その上の外縁部に反射シートと小さいマグネットを装着する。モーターを回転させ、ホールセンサーとレーザー式回転計で円盤の回転数を測る。ホールセンサーの出力はテスターの周波数で測る。結果はHz（回転数/秒）で出るので６０秒をかけてｒｐｍ（回転数/分）に直すと、レーザー式回転計での測定結果と直接比較できる。１回だけの実験結果だが、両者の測定値が割りと近いことが分かる。レーザー式回転計は十分実用になる精度を持っているようだ。
（電源リチウムイオン電池３．７V、１０オーム抵抗ありの場合）
Li-ion
battery (3.7V) through 10-ohm resistor
|
基板出力電圧 Output voltage (V) from
Li-ion battery |
回転数 Rotation (rpm) |
|
|
ホールセンサー法 Hall Sensor |
レーザー法 Laser |
|
|
4.6 |
2940 |
2930 |
|
5.5 |
3540 |
3610 |
|
6.6 |
4260 |
4330 |
H
結論 Conclusion
１）
故障して動かなくなったが、リチウム電池も制御基板も正常で捨てるのはモッタイナイ。モーターが破損したと分かったので直すことに。
２）
代替モーター探しがネット上で始まった。何日も費やした。お陰で、小型DCモーターのことがいろいろ勉強できた。
３）
前から欲しかった非接触レーザー式回転計を購入し、使ってみた。その便利さに感心。実際に、羽根車の回転数を測ってみた。１０００回転/分（rpm）位以上の測定では、下１桁目はばらついて値が定まらない。四捨五入した。ネットで検索すると測定精度に関し、凄く正確、そうでもない、と見解が分かれる。
1)
It
is possible to replace a broken motor of your handy portable fan with a new one
by yourself if you have DIY skills such as handling a multimeter and soldering
iron, together with basic electronics knowledge. The Internet is a power tool
for searching and purchasing appropriate small DC motors..
2)
An
inexpensive laser non-contact tachometer was a very helpful tool in evaluating
the rotation speed of motor and fan impeller.
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